各 学 部 紹 介 

 

文学部

 

・文学部の学問領域は,通学課程では17専攻に分かれていることを見てもわかるとおり,非常に多岐にわたっている。

・それに対し,通信教育課程では、慶應義塾に文学部が設立された当初の姿(哲学科、史学科、文学科)を残したままで、3つの類、すなわち、第一類:哲学を主とする類(哲学、倫理学、美学美術史、図書館情報学、社会学、心理学、教育学、人間科学)、第二類:史学を主とする類(日本史、東洋史、西洋史、民族学考古学)、第三類:文学を主とする類(国文学、中国文学、英文学、仏文学、独文学)、に分かれているだけである。かつ,卒業までに履修しなければならない専門科目に関する制限も緩い。

・これは学生諸君が自分の履修したい科目を自由に選べることを意味するが,同時に自分の科目選択に自分で責任を持たなければならないことをも意味する。

・実際にはある分野での学習成果を十分にあげるためには,是非とらなければならない科目が存在する。また,卒業論文のテーマによっては,必ず身につけておかなければならない技能なども存在する。たとえば,英米文学の卒論を書く場合の,原典を読みこなせる英語力,社会学や心理学などで調査や実験を伴うテーマに取り組む場合の統計学の知識など。

・これらに関しては,どこかにまとめて記されているわけでもないし,領域やテーマによって微妙に異なっている。したがって,学生諸君は学びたい学問領域,研究したいテーマがある程度はっきりしてきたら,教員,学習指導係に相談するなどしてしっかりした学習計画を立ててほしい。

・学問領域が多岐にわたっているということは,これまで自分が思っても見なかったおもしろいテーマが見つかることや,自分の探究したい問題が思いがけない方向から研究できることがわかったりする。できれば,新入生諸君は余裕を持って慶應の文学部でおこなわれている学問,研究を見渡す努力をしてほしい。

・学問領域が多岐にわたっているとはいっても,慶應の教員がすべての領域をカバーしているわけではない。慶應でなにが学べ,なにが学べないのかを知るためにも,上記の努力を希望する。(参考資料:文学部専攻案内、文学部ホームページの教員紹介、文学部だけではなく他学部の教員でも専門分野によっては卒論の指導をお願いすることがある)

・卒業論文でとりあげるテーマによっては、自分の属する類を変更しなければならなくなる場合もあるので、この点にも注意が必要である。またその可能性が出てきたとき、には早めに相談し、必要な手続きを取ってほしい。

  塾での実りある勉学をされ,卒業されることを希望しています。

 

 

経済学部

『経済学部で学ぶにあたって』

 

 慶應義塾大学通信教育学部は、昭和23(1948)年の新制大学制度の発足とともに、文学部、経済学部、法学部の三学部構成で開設されました。その後、通学課程では、昭和32(1957)年に、経済学部から商学部が分離独立しました。しかし、通信教育課程では、経済学部という学部名のもとに、商学部と経済学部の両学部の教育内容が分離されずに、今日にいたっております。このため、通信教育課程の経済学部では、商学系と経済学系の両方の科目を、全く自由に学ぶことができるという利点があります。

 

 経済学と商学は、学問の上では、いわば兄弟同士になりますが、人間の兄弟と同じように、お互いに似ていて共通する面があると同時に、それぞれの個性もあります。まず、共通している面は、どちらの系統の学問も、現代社会における広い意味での経済現象を考察の対象としています。現代社会では、個々人、家計、企業、産業、国家、世界などの様々なレベルで経済システムが組織され、経済活動が行われていますが、経済学も商学もこれらの組織や活動を論理的でかつ実証的に分析することを目指しています。また、そのような分析を通じて、経済社会がどのようなものとしてあるべきか、ということについて考察を深めることも、この分野の大切な使命だと言えます。

 

 一方、経済学と商学は、それぞれどのような個性を持っているのでしょうか。一言で言えば、経済学はどちらかと言えば、地域や国家や世界といった、さまざまな経済の担い手が集まった複合体の特質の解明に、より大きな関心があります。一方、商学は、個別企業や個別産業のメカニズムを、それらの経済活動の担い手にとって直接役立つような視点から捉えようとしています。このため、その中心にあるのは、経営学、会計学、商業学(たとえばマーケティング)、産業経済論などの、より実業的な学問分野です。ただし、これは力点の置き方の違いを述べたまでのことで、経済学的な考察のためには、しばしば商学的な知識が必要ですし、商学的な実業学の基礎としては経済学的な思考力が不可欠なことは言うまでもありません。

 

 このように、経済学系と商学系をそろえた総合的なカリキュラムの中から、皆さんは、履修ガイドにそって興味ある分野を選択しながら学んでゆくことになりますが、その学習の上で、特に大切な点を2点だけ挙げておきましょう。

 まず、経済学部での履修においては、体系的に学ぶということが大切です。経済学は、長い歴史を持つ学問であり、また、それは経済社会の発展とともに展開してきた知識の集積で、さまざまな個別領域を持っています。しかし同時に、経済学は、それらの個別領域を統合した一つのまとまりのある体系でもあり、おのずから基本となる知識があります。ですから、経済学を学ぶにあたって、まず注意すべき事は、もっとも基本的な分野を学び、それを基に、次第に、より個別的な分野について学習をするということです。単に、新聞記事のように面白いということで、特別なトピックだけをつまみ食いばかりしていては、結局、経済学や商学は、深い分析力に基づいたものとはなりません。また、今日では、情報はインターネットを通じて簡単にアクセスできるようになりました。むしろ、情報があふれすぎている、といった時代です。この情報を取捨選択し、さらに自らの頭脳で分析する能力を身につけることが、経済学の基礎を学ぶことで身につけることが重要です。

 それでは、その基本的な分野とは何でしょうか。第一には経済現象を抽象化して考察するための経済理論、第2には現実の経済社会を歴史的に把握するための経済史、そして第3には、経済社会を把握するスキルとしての統計学だと言えます。

 

 次に、経済学では常に現実の経済の動きについて、大きな関心をもって勉強をしていくことが大切です。世界で今何が起こっているのか、経済の現実の動きを常に捉えるように努めて下さい。毎日読む新聞の中には、経済の動き、産業や企業の変化についての情報が溢れています。新聞記事やテレビ報道は、必ずしも正しいとは限りませんし、学問的レベルから見ればむしろ浅薄なものが多いことは事実ですが、しかし、そのなかには、興味をひいたり、疑問を生むような問題もあるはずです。その問題や疑問を、経済学や商学はどのように扱うのか、そうした現実からの問いを発しながら学んでゆけば、この学部で学ぶことが机上の学問となることはないでしょう。

 

 最後に、経済学・商学に限らず、学問は、決して、今ここにある問題の解決のためだけにあるものではありません。学問を修得することを通じて、たんなる知識の受け手ではなく、問題を深く的確に考察できる自己を確立し、またなによりも、ものごとを学び、調べ、分析し、考える喜びを知ることこそが何よりも大切です。我々の社会の成熟は、まさに皆さん方ひとりひとりが、いかに深くそのような知性を確立するかにかかっていることを、入学にあたって心にとどめてほしいと思います。

 

 

 

法学部甲類(法律学科)

『法律学の学び方・概要』

 

 

1.法律学は、きわめて体系的な学問です。つまり、その全体が一つの体系になっているので、その体系に則って最初は基本的な科目から学び、その基礎知識の上に成立する個々の特別法を後から学ぶようにしなければ、本質的な理解を得ることはできません。一口に法律といっても、その数・種類は多岐にわたりますが、まずはこのような基礎・応用・発展の関係に留意することが重要です。

  法と呼ばれるものは、広く考えれば様々な社会の慣習等も含めた、当該社会のルールを意味します。しかし、現在“法律”と呼ばれるものは、憲法をその頂点とし、国会の議決を経て制定された国家の法を意味します。法学を大別すると、基礎法学と解釈学に分類できますが、基礎法学とは、法の歴史を学ぶ「法制史」、法の思想的側面や在り方を学ぶ「法哲学」、あるいは諸外国の法制度を学ぶ「外国法」が含まれます。つまり、法の背景ないし思想的・文化的・社会的基盤を探る分野といえましょう。これに対し、現行法の解釈・実践を条文・裁判例を通じて学ぶ分野は、広く法解釈学と呼ばれます。

 法解釈学の対象である法律は、その頂点に「憲法」を置きます。法律科目を学ぶ最初は、法の全体像を知るための「法学」と、「憲法」を学ぶことから始めるべきです。法律学は伝統的に、私法と公法の二つの系統で考えられてきました。私法領域とは私人間の生活関係を規律するもの、そして公法領域とは、国家対国家・国家の行政主体、および国家と私人の関係を規定する領域です。各々の領域は、その基本的部分から体系立てて学ぶ方が理解し易く、また早く効率的に習得できるのです。

 

2.私法領域を学ぶには、その全ての基本となる「民法」から学習するべきです。法律は一般法と特別法という関係で捉えられます。この原則は「法学」で学びますが、全体的かつ基本となる原則を定める一般法に対して、より限定された対象にとって特に必要とされる特則を個別に定めるのが特別法です。例を挙げれば、一般的に全ての私人の関係を規定する「民法」の中で契約等の概念は定められますが、これに対して「商法」は、特にその中でも商人間の取引等を対象として特別な規定を定めています。つまり、基本原則は民法にあり、その構造が理解できていることを前提として商法の議論はなされるのです。そのため、まず基本構造を理解した後に特別法を学ぶ方が、体系的に無理が無く、かつ早く理解できるわけです。

 

3.同様に公法もまた体系で学ぶべきです。ただし公法領域は、国家に対する私人の罪を律する「刑法」分野、国内の行政主体間及び国家と私人の関係を律する「行政法」分野、あるいは国際間の国家の関係を律する「国際法」分野等に分類できます。これらの領域は、直列的に配置されているわけでなく、むしろ憲法を頂点としてその下に並列しています。従って、どの分野を先に学ばなければならないという順位はありません。しかし初学者が最も取り組みやすい領域は、おそらく「刑法」分野でしょう。窃盗や殺人のように我々の頭で実例が想像し易く、かつそこで求められるのは被疑者となった者の人権をどう守るかという問題でもあり、憲法の精神をそのままに体現する領域です。

 

4.上記の二領域に加え、現代社会では第三の領域たる社会法のウェイトも増しています。社会法とは、私法の行き過ぎた形式的平等を是正するため、いわば社会的弱者に対し国家的視点から保護を加えるために形成された領域です。そのため、歴史も浅く、同時に現代社会の中で非常に変化している領域です。例を挙げれば、労働者と使用者との間を規律する「労働法」、企業間・国家間の公正競争を担保する「経済法」、あるいは新しい領域としての「環境法」などがあげられます。この領域は、一方で私人間の契約等を基礎としつつ、他方その総合的コントロールを国家的視点から行うという意味で行政法学なのです。従って、社会法は公法と私法の双方にまたがる領域として、むしろ基本的な「私法」と「公法」の体系について理解した後に、取りかかるべきです。多くの学生の方々にとってむしろ馴染みがあるがゆえに、まずこの領域から学び始める方がいます。これは、学習上極めて拙いやり方です。

 

5.以上、簡略に法律学の学び方をまとめました。通信教育課程の学生の方々が陥りやすい問題点の一つとしては、これら体系がきちんと頭に入っていないままに、単位を取り易そうな分野から非常に場当たり的に学習を進められる方がおられるということが挙げられます。これは単位取得の面からは一見早そうに見えるのですが、最終的に卒論作成段階になってまことに問題が多い場合があります。ですから、最初はなかなか取り付きにくく分かりにくいとしても、段階を踏んで体系的に理解した方が、最終的には遺漏のない法律学を学ぶことができると申せましょう。法律は本来、誰でも理解しうる合理的な内容を有しているはずですので、上記のような基礎・応用・発展の関係に留意しながら丹念に学習していくことにより、確かな成果を上げることが可能であるといえるでしょう。

 

 

法学部乙類(政治学科)

 

  法学部乙類(政治)では、政治の現象や考え方を、歴史の軸と同時代の軸とを絡めながら学問的に整理し学ぶことになる。学問の系列は、政治思想、政治・社会論、日本政治、地域研究、国際政治の5つの分野にまたがり、政治の総合的な学習・研究が可能である。

政治思想に関しては、西洋のものを中心に古代から現代にわたる思想、政治哲学が学べる。政治・社会論は、主に現代の事象にまつわる政治理論、地方政治、行政学、経済学、社会学、マスコミュニケーション論などをカバーする。日本政治では、古代から現代にかけて、政治的人物や事件、政党、議会、選挙に関して学ぶことができる。地域研究は、中国、朝鮮半島、東南アジア、オーストラリア、アメリカ、ラテンアメリカ、ロシア、ヨーロッパ、中近東、アフリカなど、文字どおり世界を網羅する。国際政治では、冷戦史、軍事史、日本外交、現代国際政治、国際政治理論などが対象となる。

卒業論文の作成に向けてこれらの何に専門を絞るにせよ、その前の段階で幅広い総合的学習が不可欠である。一見日常生活から離れた世界に存在するかのように思える政治は、実は人間の営みと様々に直結しているからである。単位修得過程でのレポート作成やスクーリングをとおして政治学の基礎を築いた上で、卒業論文の作成によって各自の関心をさらに深めていただきたい。

 

以上